大径の枯枝と鳥類—BirdNETと出遭う

シラカシ大木の異変

 異変と言っていいものか、それともシラカシという種の生理現象なのか、太い枯枝が多数出ている。このシラカシ(ID140)、樹高20m、胸高周囲長200㎝ある。東側に大きく張出し、中庭を侵食していたので2019年に大枝を剪定した。付近は明るくなり、その後数年はギンランなどもみられるようになった。2023年流行の穿孔性の甲虫カシノナガキクイムシのマスアッタックを受け、白い樹液を流し昆虫の食害に耐えた。毎年8㎜ほど幹(DBH)は太くなるが、攻撃を受けた年(2023-2024)は明らかに成長は鈍り5㎜程度であった。その翌年は8㎜の成長に回復している。コナラなどでは、マスアタックを受けると過剰な防御反応が原因で、かなりの割合で枯死する。シラカシは枯死する確率は低いと言われるが、一体どんなところにその影響は表れるのだろうか。

 そう思っていたところ、症状が大きく現れた。大径の大枝がいくつも枯れたのだ。その枝は樹冠ではなく下枝である。他のシラカシでは別のことが起きている。葉が少量となり小型化し、日照が林床までとどくほどだ。件のシラカシ、樹形全体を見れば、葉量豊かで衰えている印象はない。だが、日の届かない、樹冠の下側は数メートルの隙間が生じている。樹冠手前側もギャップらしきものができている。
 考えてみれば、樹木も生物で呼吸をしている。日射を受けられない葉を大量に持つ大枝の炭素収支はマイナスであることは間違いない。成長に危機が生じたとき、成長の足を引っ張る下枝を枯らすことは合理的なのかもしれない。

枯枝の役割

 この枯枝、木に登って枝を落としてしまおう、とまず考えた。ちょっと待て・・・・。
枯枝にも役割があるはず。役割とは、いろいろな生物の餌となり住処となり生物多様性に貢献することだ。より複雑に生物同士がやりとりし、重層的な環境をつくることが理想なのである。高いところから落ちてくる枯枝にはキノコがよく付いている。ヒイロタケやキクラゲなどが多い。キノコには虫が寄ってくる。小さな虫から大きな虫まで。枯枝は甲虫たちの揺り籠で、カミキリムシやタマムシなどの幼虫はそこで育つ。鳥はその虫を狙う。

 そんな折、BirdNETというスマホアプリを同期の樹木医から紹介された。この森では、幹周15㎝以上の樹木はすべて調べている。昆虫の調査も手を付けはじめている。だが、鳥類はいいカメラがないのと、静かに待つことができないので、手がつけられないでいた。とりあえず使ってみた。鳥のさえずり、音声を頼りにAIで種を判別しようという試みだ。あっという間に、21種の鳥がリスト化された。まず、ありえないだろうという種を3つ削除したが、イスカ、ウグイス、エナガ、オオジュリン、オナガ、キクイタダキ、キジバト、キバシリ、クサシギ、クマゲラ、シジュウカラ、シメ、ハシブトガラス、ヒヨドリ、ミソサザイ、メジロ、ヤマガラが現れた。(クサシギはおそらく間違い)

 このアプリを使う段階で、いかに鳥を目で追う事しかしていなかったことに反省した。それも、はっきり覚えている鳥しか存在を認識できていなかった。キクイタダキは英語でGoldcrest。割といる鳥のようだ。メジロ、ウグイスよりも小さいらしい。このアプリと接することで、一気に鳥のニッチとして森を見るようになった。ずいぶん世界が違う。枯木はとても重要なのである。人に危害が及ばないなら、枯木は極力森の財産として残しておこうと思う。

自然共生サイト管理人。樹木医。松戸市在住。羽黒派修験道 山伏先達。

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