ようやく使い道を見つけた
天神山の木をまるごと伐採することは滅多にないが、斜立しツバキが絡んでいたので、思い切って伐ったのが写真のサワラ。伐採したものの、材の使い道をずっと考え続け、乾燥すること3年余りを経て、ついにその時が来た。
当初は、この丸太にそのまま丸穴をあけようと考えていたが、どんな道具で、どう押さえて作業するのかイメージが湧かなかった。まず、丸太を真っ二つに割ろう。漠然とした完成形のイメージしかないなかで、作業ははじまった。
墨壺のかわりにマスキングテープで直線をつくり、筆ペンで墨を入れ、チェンソーで切断していった。こんなに長くチェンソーを回してた経験がなく、燃料を二度給油し、二日にわけて作業を完了。チェンソーの研ぎに注意を払いなんとか二つに割ることができた。
完成形がイメージされる
漠然とした完成形のイメージぐらいしかない、と書いたが、置き場所の寸法を測り、そこに納まる長さにあらかじめ切っておいた。グラインダーは持っていたが、荒削り用の研磨ディスクがなかったので購入。削ってみると、丸太から荒々しさが消え、材木となり、一歩、製品に近づいた感じだ。
作るものをご紹介しよう。山伏が手に持つ金剛杖(こんごうづえ)が20本ほどあり、それを一列に立てる台が欲しかった。なので、丸太に孔を貫通させ杖を差す置物をつくりたかったのだ。簡単なようで考えるところが沢山ある。まず、杖を簡単に差し、簡単に外せる必要がある。外部なので、水が溜まらないようにしたい。下を掃除できるように、なるべく半割の丸太を浮かしておきたい。置物と一緒に杖が転がらないように高さ、幅が適切であること。なるべく埃がたまらないようにしたい。最低限の加工で機能を果たせるようにしたい等々。
考えはいろいろめぐるが、まず孔を明けたくなり、孔の数を決めたらすぐに明けてしまった。時間はかかったが、最初の孔がきれいに抜かれたとき、はじめて「いける!」と思った。
孔を次々と明けていく。孔の径は35㎜、ピッチは160㎜。どんな道具で孔を明けるのか随分悩んでいたが、幸運にも「速切木工ボアビット」というスグレモノに出遭い、きれいな丸穴にすることができた。ただ、切り屑を穴から掻い出しながら、削っていくので、力の加減と上下運動に慣れるまで習熟が必要だった。
写真は最後の孔。切り屑が孔のまわりに積まれ、花のようになる。切り屑も心材と辺材では色が違い、硬さも違う。心材は赤味があり、硬い。そういう道具と材料の触れあいが作業を充実した時間にしてくれる。白っぽい切り屑がでてくれば、作業は終わりに近い。
全部孔が明いてしまうと、またまた居ても立っても居られず、実際の雰囲気作ってみたいと思い仮置き。仮置きでも何とかサマになった。山伏が一堂に会している風情。めでたしめでたし。本日はここまで。