子供から大人まで

 人の話ではない。木の話。森ではほぼ、生まれたばかりの実生から、幼木、若木、成木と様々な樹木の顔を同時に見ることができる。今回は、クスノキを例にとり、順に紹介していく。ここ、天神山ではクスノキ(Cinnamomum camphora)は自然植生では存在しない。先輩の樹木医から聞いた話では、千葉県北部では、タブノキ(Machilus thunbergii)をクスノキと呼んでいたらしい。

 写真(上)は、天神山の毎木調査で唯一、数えられているクスノキである。もちろん、植栽したした木である。当初、30年ほど前には、樹高3-4mだったように記憶している。今では樹高9.5m、胸高直径20cmに育っている。クスノキにしては全く成長が悪い。転圧した基盤であることが影響しているように思う。今回のタイトルは、「こどもから大人まで」という中では、大人と言い切れるかは疑問があるが、一応この状態を大人としておこう。

実生から育った若木

 次にお見せするのは、樹高3m位の若木。ごちゃごちゃしていてわかりにくいが中央にある。多少は日照を受ける位置に生えている。直径は2cm位。葉は、だいぶクスノキらしさが出てきたが、表は割とテカテカして成木の葉とは印象が違う。青軸の樹幹が伸びていたり、葉の裏ががマットで白っぽいのでクスノキとわかる。

小学生なりたてくらい?の幼木

 3枚目の写真は、ついこの間まで、苗だった4-5年生のクスノキ。幹は緑色で光合成をしている。葉柄に赤味がありそれがククスノキらしさを感じやすい。このサイズは、同じクスノキ科のシロダモも似たようなな雰囲気があるので慎重に見分ける必要がある。因みに、シロダモの葉柄は赤くならない。クスノキの葉柄は、赤味があるもの、ないもの、もどちらも存在する。この若木でも丈は、人の身長くらいはある。

クスノキの実生

 この写真はようやく見つけた実生。実生といっても8枚も葉があるので、幼木と言ったほうがいいのかもしれない。葉脈もクスノキ科独特の平行に走る筋はないのでパッと見ではクスノキと思わないかもしれない。周りにある実生のほとんどはカキの実生である。こんなに実生はあってもカキノキに育つのはごく一部である。近くに大きなカキノキがあり、近いところに林立するのを阻害する仕組みを持っている(ジャンゼン・コンネル仮説)。クスノキの実生は近くにこれしかない。

葉の裏側

 らしくない葉の雰囲気だが、裏側を確認すれば、クスノキであることがわかる。

このように、森では実生、幼木から高木になるまで様々な姿を見ることができる。クスノキが大木になるのは数百年。直径20cmのクスノキはまだまだ大人とは言えないのかもしれない。それでも、つぎつぎと次世代が育ってきている。未来の森は、また、違った姿になるのかもしれない。

樹木医三十の会所属。管理人。松戸市在住。羽黒派修験道 山伏先達。

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