トチノキの治療

背後にそびえるトチノキの大木

先輩樹木に導かれとある公園の樹木治療に参加した。治療目的は、根株心材腐朽菌に犯されているトチノキの樹勢回復と感染防止。過去の木チップ敷設が災いし、ナラタケモドキが蔓延、このままでは、樹木を枯らしてしまうため、治療が始まった。今年で3年目だそうだ。これが原因で、既に枯れてしまったトチノキや瀕死の木もある。もちろん、健全で感染していない木もある。今回は、健全な木に感染が広がっていないか、チェックし、感染の兆候を見つけるのが仕事だ。

ナラタケモドキの子実体(キノコ)

この作業のなかで、感染の兆候を見つけること、つまり初期段階の感染した株をみつけることが大変難しい。先輩は意図も簡単に見つけてしまうので、どこを見ているのかいちいち確認。ヤニにも種類があり、菌糸を見つけることが重要だ。菌糸が固まっていれば、いい匂いのキノコ臭がある。これもひとつひとつ経験を積み重ねることが重要、見て判断を繰り返すうちに腕を上げていくのだろう。

ナラタケモドキの他に、クワカミキリの穿孔害、コガネムシの食葉害、ヨコバイによる葉の変色、落葉などの被害も見られた。一人でわかることもあるが、判断がつかないことも多い。よくわかっている人たちとともに、集団で観察できる機会は貴重だ。

クワカミキリの穿孔跡

ナラタケモドキの菌糸は、樹木の生きている部分=辺材部に層状の入り込み、材を分解していく。次第に葉に水と栄養を供給する道管や、枝や根に糖分を供給する師管を壊し、樹木を枯死させてしまうのだ。根からせりあがって上に登っていくので、根のまわりをしっかり見る必要がある。ときには、根を掘って確認する。

根株を掘り下げ調査

過去の治療作業では、経年で変化が見られるように、ブルーシートと土嚢を使い、根元の観察ができるようになっている場所もあった。過去の治療部分の多くは効果が発揮でき、状況は改善されていた。今回は、うまくいかなかったところを見つけていく。腐朽が見つかれは、腐朽個所を削ってととのえ、薬剤を塗布し、地下であれば、埋め戻し、次回、状況を確認する。

最後に根株まわりに薬剤を灌注し作業を終えた。普段、生態系に重きを置き、ほとんど薬剤を使用することは避けている。けれど、文化遺産に近いトチノキ、枯死を最小限に抑え、まともな状態に回復させるには、薬剤の灌注は必要であろう。人と樹木の関わりかたにいくつものバリエーションがあることを気づかされた。

薬剤を攪拌中

自然共生サイト管理人。樹木医。松戸市在住。羽黒派修験道 山伏先達。

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